土曜日, 8月 07, 2010

コア・アイデアは、「時間戦略」で語れ。

広告会社の企画会議で、常に飛び出すのは「コア・アイデアに沿って…」という会話。
コア・アイデアとは、言うまでもなく、広告・販促キャンペーンを形成する戦略コンセプトであり、目標を達成するための施策のメカニズムや効果的な表現を考える根っこである。
TVCFの面白いギャグとか人気タレント、プロモーションで貰える賞品アイテムのような表現アイデアのネタではない。しかし、広告人でも開発途中で、頭の中が錯綜し、混乱する人もたまいる。
「やっぱり、Gagaだよ。Lady Gagaをカッコ良く使えれば、ゼッタイ話題になるよ!」みたいな事を真面目な顔で発言する。

TVを中心とするマス広告が主流だった時代には、これらのクリエイティブ表現のアイデアとコミュニケーション戦略のコア・アイデアが同じように扱われていたこともあった。当時は、何と言っても広告代理店が力を注ぎこむのはTVCFを中心とするマス媒体広告のクリエイティブ。クライアントも媒体費を含めて最も大きな広告予算を割いた。
コミュニケーション戦略とは広告戦略にすぎず、マス広告の媒体プランやクリエイティブブリーフに集約されてしまう。プロモーションやDMなどその他のコミュニケーションプログラムは「それに合わせて、よきにはからえー」的な展開が大勢を占めた。

売るコミュニケーションのプロ達も、「カッコイイ○○」とか、「グッとくる○○」とか、「スゴク素敵な○○」など、やけに形容詞の多い言葉でまとめられたクリエイティブブリーフに疑問を感じながらも納得しなければならず、結果、トータルコミュニケーションとして俯瞰して見ると、それぞれの活動のアウトプットがチグハグになることもよく起きた。

今では企業もコミュニケーション活動全般に「売れる効果」を期待するようになり、ターゲットも従来の属性に、Tribe[共通の趣味嗜好をもつ部族的な集団]と呼ばれるセグメントが加わった。さらに、WEB、モバイル、デジタルサイネージなどデジタルも含めて媒体は多様化し、情報をキャッチするディバイスも加速的に進化するようになり、ソーシャルグラフはますます複雑になっている。
当然、クロスメディア・コミュニケーションを開発するためのコア・アイデアも、全ての施策にパーっと網を放つような戦略的コンセプトに変わっている。

一旦発信されたブランドや製品の情報は、様々なタッチポイントを通過しながら、勝手に独り歩きするようになった。
受け手であるターゲットは自分の興味に合う情報だけを器用により分け、不要な情報はポイっと捨て去る。気に入った情報だけを持ち歩き、彼ら自身が自分流に発信する媒体と化した。
そのようなコミュニケーションの流れをシュミレーションしながら、思い通りに、目的地まで落とし込むのがキャンペーンのSTORYである。




STORYのシナリオは、生活者の刻々と動く時間の中で描かれなければならない。
ターゲットのインサイトとは習慣や流儀、学習など、彼らの生活24時間から育まれるものだ。
彼らが、いかにそのブランドや製品の情報を選択し、いかにその情報を抱えながら彼ら自身の時間を共に費やしてくれるのか、いかなる時にその情報を友人に話したくなるのか。そんな行動の流れが1つのSTORYになり、そのシナリオの善し悪しを決めるのがコア・アイデアである。

かつて、私の働いていた広告代理店では"Time is a new Currency"時間が新しい通貨である)というスローガンを掲げた事がある。当時はピンとこなかったが、今では、確かにコミュニケーションを考える時、「時間」こそがコア・アイデアを生み出す、大きな手掛かりなっていると思えるようになった。

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