火曜日, 7月 06, 2010

Twitterとリアルメディアの効果比較はできるのか?

日本のユーザーが1000万人を越えたという理由で、Twitterを利用した広告手法の開発が百花繚乱とも言える様相だ。確かに旧来のマスメディアに比べれば、企業が発信する情報より、緩いつながりであっても身近なフォロー、フォロワ―の発言の方が信用されやすいかもしれない。

果たして、Twitterだけでブランディングや購買行動に効果を保証できるのだろうか。Twitterの効果測定の尺度と言えば、フォロワー数やRT(ツィートを転送)数などがあげられる。しかし、クロスメディアの仕事をしていると、多少の齟齬があってもリアル媒体もデジタル媒体も共通の尺度で測定してみたくなるものだ。数値化した場合、Twitterはリアルメディアの効果を越えられるのか?

今日は、無印良品が2月にTwitterを利用して注目された“タイムセール、なう!”を振り返って、KPIの数値化シュミレーションをしてみたい。
“タイムセール、なう!”は、当時Twitterを使っていた広告/コミュニケーション業界やマーケターの方々には既に周知のプロモーションだが、キャッチアップしそびれた方のために簡単に説明をしておこう。

無印良品はフォロワーが15,000人に到達したのを感謝して、2月16日11:00から3時間だけ(実際には1時間延長)実施したTwitter専用のタイムセールである。具体的な内容は下記URLからTechWave.jpの湯川氏と良品計画の川名氏の対談をご覧になると時系列でどのような変化が起きたかかがご理解いただけるだろう。
http://techwave.jp/archives/51411971.html

私はクロスメディア・コミュニケーションのKPIを試算する時、逆ピラミッド型のオリジナルフォーマットを使っている。そのフォーマットで「タイムセール、なう!」のKPIシュミレーションをしてみたのが、下記の図表である。
フォロワー15,000人がどのくらい情報をRTし、その情報を受け取った人々が次の人にRTし、最終的に何人がセール会場サイトにクリックして出かけて行ったのか、セール会場に行った人がどのくらい購入したのか。まさしく、シーディング(種蒔き)プログラムである。




ここでは、様々な調査のベンチマークを使いながらシュミレートしたのだが、想定数値の理由を事細かくは述べていない。理由はこのシュミレーションの数値が精巧であるかないかは大した問題ではないからである。RT率が10%前後ぶれても大きな傾向は変わらない。そういう前提で、見ていただけばいいと思っている。尚、630人が購入したと聞いているが、金額は不明なので、最もボリュームゾーンと考えられる送料無料ラインの¥3,000を平均値とした。

たった4時間で行われたTwitterのRTがTLに流れた人々はおおよそ136万人に上る。雑誌の発行部数をImpressionと考えて広告掲載ページに換算すれば、With(45万部)なら3ページ、VERY(25.2万部)なら5.4ページ、JJ(21.5万部)なら6.4ページ分に相当する。金額換算すれば、Impressionだけで、JJなら1,472万円の価値があったということだ。
CTRの2.8%も高い数字だが、15,000人のフォロワーに対し、CVR4%の高さは驚異的である。しかも、セール会場に行った人の10人に1人は購入していることになる。この計算で行くと、3,000円の買い物をしてもらうのに¥317(CPA)の広告費しかかけていないことになる。
1日で1000人(6.7%)のフォロワーが増えたというのも大きな効果だろう。

さて、このような成功例をリアルメディアとの数値比較で見てみると、Twittrerだけで目的が達成できると言い出す人もいるのではないだろうか。
私は、簡単にそのような提案をしてしまう広告人や何でもかんでもTwitterを使えばいいと思う広告主が出てくることを危惧している。

無印良品はTwitterrアカウントを開いてから約4-5カ月間をかけて、15,000人のフォロワーを獲得したのだ。Face to Faceの些細な問い合わせに丁寧に対応したり、昼夜を問わずTLでやり取りされるツィートを見て、ブランドに対するコメントをヒアリングし、初めて達成できたことでもある。
この長い時間と人的な対応は、さすがに広告費換算は簡単にできない。この逆ピラミッドの中に数値を入れるのが不可能な部分なのである。

私見だが、Twitterはコミュニケーションをサポートするプログラムとして活用するのが最も利用価値が高いような気がする。SMMが益々進化する中で、Twitterの上手い使い方もどんどん提案されていくに違いない。

マーケティング・コミュニケーションを仕事にする身にとっては、数値のマジックに自らも振り回される可能性が高いこと、そして、そのマジックを見抜くには数値とは関係のない次元でモノを見る力も必要なことを改めて強く感じている。